声楽〝より美しい声で歌うための腹式呼吸〟

声楽レッスン

誰もがより美しい声で、音楽の素晴らしさを伝えたいと願っています。
歌が上手くなることの第一歩として まず今回は腹式呼吸について説明します。
さあ素敵な歌声を手に入れる第一歩、歌うための息を吸い、声帯を振動させるための息を吐いてみましょう。

歌うことに《腹式呼吸》が大切

声が出る仕組み

声の音源、声が鳴るところ それは声帯です。
声帯は私たちののどにあり(下図には声帯の位置を紫色のペンで書きこんでみました)左右2枚のひだでできています。
声帯の2枚のひだは、呼吸しているときは開いています。
食事を食べたり 水分を飲んだりしているときは、それらが誤って気管や肺に入ってこないよう、しっかり閉じています。
声帯は、あなたが声を出そうと思った時だけ適度に閉じ、あなたの吐く息で振動し、声の源を作り出します。

声を出そうと適度に閉じ準備している声帯を振動させ、声の源を作り出せるのは、あなたの吐く息だけです。

歌うための呼吸器官の役割

声を出すための器官は、呼吸器官・発声器官・共鳴器官の3つの気管からできています。
私たちは声を出すために息を吐くよりも前に、口や鼻から息を吸い込み息を吐く準備をしなくてはなりません。
しかも声楽曲を歌うためには、普通の生活時の何倍もしっかり吸って、しっかり吐きたい。
でも上の図を見てください。いっぱい息を吸うはずの肺は、しっかりと側面を骨に囲まれています。
そしてこの肺は、自ら息を吸うことはできません。
肺自身は息を入れる器で、呼吸をするには、周りの筋肉に収縮させてもらわないといけないのです。

普段の生活、深呼吸や激しい運動をした時などの呼吸(肩で息をするイメージ)は、ほぼ胸式呼吸肺を取り巻く胸郭を周りの筋肉で前後左右に広げる呼吸です。
歌うためにはあまり向いていない呼吸です。

では腹式呼吸はどうでしょう。
上の図ではマーカーで緑色に着色された横隔膜。ぐっと下に押し広げながら息を吸うと、肺は大変多くの息を吸うことができます。
そして息を吐く時は、横隔膜の元に戻ろうとする力と、さらにそれを助ける筋肉たちによって多くの息を勢い良く吐くこともできます。
しかもこの横隔膜は、横紋筋でできています。
横紋筋は自分の意志で動かすことのできる運動筋肉です。
あなたの欲しい歌声を作り出してくれる吐く息は、横隔膜を使った腹式呼吸で作り出すことができます。

歌うための腹式呼吸

腹式呼吸は、横隔膜の上下運動に補助筋群を使い助ける呼吸法です。
呼吸を行う時の筋肉は、吸気筋(息を吸うとき働く)と呼気筋(息を吐くとき働く)として役割分担します。
吸気筋と呼気筋は、どちらか一方が働くとき他方の働きは抑制されます。
つまり息を吸うために吸気筋が働いているときいる時は、呼気筋は働かずに控えているということです。
横隔膜は吸気筋です。腹部辺りの力を抜き息を吸うと、横隔膜は下方へ広がり肺に多くの息を入れることができます。
息を吐くときは、横隔膜の元に戻ろうとする力を、腹筋や骨盤周りの筋肉(呼気筋)が助けます。

歌っている本人の感覚としては、
横隔膜をゆるめて歌うための息を吸う。
そして、肺に吸い込んだ息は、ここから吐く息(呼気)にかわります。
吐く息は、歌うために適度に閉じて準備している声帯に圧力を与え、声帯の左右のひだの間を通り抜けながら声帯を振動させ、歌い手の表現したい歌声の音源を作り出さなければなりません。
ゆるんだ横隔膜を腹筋や骨盤底筋などを使いお腹側から押し上げ歌うために息を吐きます。
  ※注:息を吸うときに横隔膜をゆるめると記しましたが、医学的(お医者様は)には横隔膜を張ると表現されます。
横隔膜は意識して腹式呼吸をしていない時は上図のようにお椀を伏せたような形で収まっています。
腹式呼吸で息を吸うとき下に下がって張るので、筋肉としては緊張状態ととらえます。

思い通りに歌うための腹式呼吸をマスターする

あまり最初から何度も練習しないで下さい。
息の吸いすぎも吐きすぎも健康な体のバランスをくずします。
はじめは確認程度に。
気分がすぐれなくなったらすぐにやめてくださいね。

腹式呼吸の理解と確認

横隔膜を中心に腹式呼吸をする
  • 重心がぶれないよう、過度に力まず、姿勢良く立つ。
  • お腹の周りの力を抜き、横隔膜がゆるんで下がった感覚を確かめる。
  • 横隔膜が下がる感覚に合わせて息を吸う。
  • 下がった横隔膜を腹筋やその他の筋肉で押し上げながら息を吐く。

むやみにお腹を膨らませたり、へこませたりしないで下さい。
横隔膜で息をすると自然にお腹は膨らんだりへこんだりします。

腹式呼吸+歌うための声の支え(呼吸保持)

歌うための腹式呼吸のところで少し触れましたが、吸気筋である横隔膜が緩んで肺に息を入れているとき(吸気時)、呼気筋である腹筋や骨盤底筋は控えています。

そして さあ息を吐いて歌おうと思った時(呼気時)、息を吸おうと頑張っていた横隔膜は元へ戻ろうとし、私たちは、それを助けるために呼気筋である腹筋たちを酷使します。

この吸気筋と呼気筋がバトンタッチをするとき少し止まってほしいのです。

ただ息を止めるのとは少し違います。
声帯を開いたいたまま止まります
そしてゆっくり息を吐きます。

“声が出る仕組み”のところで述べましたが、声帯は呼吸をしているときは開いています。
ゆっくりと横隔膜で息を吸い、そのまま声帯の開いたままで息を止め、ゆっくり息を吐く。

ぜひやってみてください。

まとめ

私たちの体には声を出すための器官として、呼吸器官・発声器官・共鳴器官の3つの気管があります。
その中の呼吸器官の仕組みを知ることで正しい腹式呼吸をマスターする。
正しい腹式呼吸 それは美しい声を出すことにとどまらず、伝えたいあなたの音楽表現にもつながっていきます。
歌う喜びは計り知れませんが、思うように歌えない悩みもまた計り知れません。
このブログが、少しでもその悩み解決になってほしいと思います。